Mitsukuri写真倶楽部

伊賀の石仏をめぐる冒険

 

岡山の石仏(北向地蔵)

三重県伊賀市寺田
南北朝時代
伊賀市指定文化財


北向地蔵

寺田毘沙門寺の参道入り口に「岡山遊園地」の大きな案内板が掲げられている 三重四国八十八ヶ所霊場、伊賀四国八十八ヶ所霊場の「大光寺」を経て、岡山山頂(327m)に至る登山道だ
その山道を10分ほど登ったところに巨大な花崗岩の自然石に三体の地蔵さんが彫れている「北向地蔵」だ「岡山の石仏」とも呼ばれる
四隅を隅切りした横長の龕部を彫り窪め その中に三体の地蔵坐像を厚肉彫りしている
美しい八角四重蓮華座に目を奪われる


寺田の石造地蔵菩薩坐像群

今年(2017)2月に『寺田の石造地蔵菩薩坐像群』が三重県の有形文化財(彫刻)に指定された
この「北向地蔵」と「坂之東地蔵堂の地蔵石仏」そして「桐之木谷地蔵坐像磨崖仏」の三基だ
いずれも隅切りの龕部に地蔵坐像を厚肉彫にしていて
特に目を引くのが蓮台・敷茄子・反花・框で構成された華麗で繊細な八角四重蓮華座だ
ほかにも二重円光の光背 蓮華文単弁の頭光 左手に持つ比較的ちいさな宝珠などの共通した様式を持ち それらを寺田型地蔵と呼ぶこともある


大岡寺

岡山の山頂付近にある大光寺は天正伊賀の乱で消失した大岡寺がその前身で 寺田周辺にはその大岡寺にまつわる遺品が数多く残る
三国地誌には天平勝宝五年(753)二月初午の日に 当時の服部党党領平康氏入道が 僧覚真を開祖として仏堂を建立したのが始まりと伝えている
『伊水温故』には「本尊十一面観音 金體長一寸八分 鎮守弁財天 旧記 甲賀三郎兼家ノ衛佛也 兼家当国ノ守護トナリ 伽藍造立シ麓ノ里ヲ寺領ニに寄付シ寺田ト号ス 麓ヨリ八町山上ニ往日ノ旧跡ニ草堂ヲ結ビ古仏ヲ安置ス 例年二月初午ノ日ヲ縁日トシテ緇素ノ参詣群ヲナス 世ニ馬頭観音ト称ス 旧記ニ本堂 回廊 三層ノ塔婆 客殿 仁王門 庫裏に及瓦葺 寺門二十坊 寺領八百石 天正乱ニ火」とあり 後に甲賀三郎兼家が伊賀国の守護となったとき 伽藍を建立し 麓の里を寺領として寄進し寺田と称したことがわかる


西大寺流

現在は真言宗豊山派に属するが元は真言律宗(西大寺流)に属して西大寺諸国末寺帳にも「八鳥服部大岡寺」と記載されている  壬生野の廃大聖寺など伊賀には西大寺流の末寺が12ヶ寺あったが 大岡寺は伊賀における西大寺流の教線を支える有力な寺院であったのだろう
壬生野の廃大聖寺の遺品とされる鎌倉時代後期(14世紀初頭)の五輪塔が川東の阿弥陀寺に残されている
14世紀初頭といえば西大寺流に帯同して伊派や大蔵派の石大工が多くの遺品を残した時期に重なっている また伊賀には富永の伊賀別所に伊行末の作とされてる石造基壇が残るが 石大工をはじめとした重源の人的資産の一部も西大寺流の叡尊に引き継がれたことだろう
寺田地区に残される一連の地蔵石仏と特に畿内を中心に活躍した伊行氏や伊行恒ら伊派石工との間には濃密な関係があったのではないだろうか


伊賀市指定文化財 岡山の石仏(北向地蔵)(出典;現地案内板)

高さ140㎝、幅350㎝、奥行340㎝の花崗岩の自然石に縦70㎝横136㎝の枠を彫り込み、その中に、像高36㎝、台座の高さ24㎝、総高60㎝の三体地蔵尊を浮き彫りとしています。
南北朝時代の作とみられ、大光寺参道脇に北向きに所在するため北向地蔵と呼ばれています。


参考書籍

「右側の木かげに花崗岩の大きな岩があらわれ、その表面に左右136センチ、高さ70センチの彫りくぼめを作り、敷茄子つきの蓮華座上に坐る地蔵像を厚肉彫します。二重光背を負い、頭光は蓮花文とし、三体とも錫杖・宝珠を持つ通常の形相です。その彫刻は丁寧でやさしさにあふれ、鎌倉時代末期のきわめてすぐれた石仏であります。同じ上野市の花の木磨崖仏に次ぐ美しい石仏といえましょう。」※「伊賀」川勝政太郎氏著
「三重が重ね八角形の豪華な台座は、石仏としては珍しいものである。その上に座す地蔵も細部まで技巧を凝らし、後ろに負う光背にも蓮華弁を飾る。極めて凝りに凝った石仏で、その繊細優美さは、他の石仏に余り例を見ない。」※「石仏」清水俊明氏著



行きかた

名阪国道中瀬インターを降り、国道163号線、伊賀街道を東に約1km進むと「岡山口」バス停があります。ここからから北に折れて400mほどを歩くと小高い山を背にした毘沙門寺に着きます。岡山遊園地案内図という大きな案内板が出ているので、そこから林道に入ります。この山には山頂近くに大光寺という古いお寺があり、参道を歩いて周遊することができます。案内板から15分ほど歩くと参道の右手に北向地蔵が見えてきます。

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